書籍情報
Book information
『 此君亭好日 』
約100年前、人間国宝・生野祥雲斎が大分の別府湾にほど近い棚田の跡に簡素な工房を建てたことに端を発して、此君亭の歴史は始まります。祥雲斎と息子の徳三氏が竹芸家として一歩ずつ感性を研ぎ澄ませていくことと並行して、此君亭もまた年月とともに少しずつかたちを変えて現在の姿に至ります。今日までの永い年月で生まれた数々の竹芸作品と同様に、此君亭という名の自宅兼工房は、竹芸家親子二代によって築かれた美の集大成でもあるのです。
祥雲斎の美学を現在の日々の暮らしの中に引き継ぐ徳三、寿子夫妻。日の出から日没までの一日の時間と歩調を合わせて行われる仕事と家事。日々の営みが身近な花鳥風月と見事に調和した日本人の暮らしの世界が垣間見えます。普段の慎ましい暮らしの中にこそ日本の美は立ち現れることを教えてくれます。
生野 祥雲斎
About Shounsai
生野 祥雲斎 | しょうの しょううんさい
1904 – 1974 竹工芸家 大分県別府市出身
1923年に佐藤竹邑斎に師事。21歳の時に独立し夢雀斎楽雲と称したが、後に妙心寺管長の神月徹宗に名付けられた生野祥雲斎を用いる。
1938年から大分県工業試験場別府工芸指導所勤務。
1940年の文展に初入選。以来、文展に出店し、1943年に『銘心華賦』が特選。
第二次世界大戦後は、純粋な造形美を志向した制作を行い、1956年に『怒濤』が日展北斗賞。1957年に『炎』が日展特選・北斗賞。
1967年、竹工芸初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。
生野 徳三
About Tokuzo
生野 徳三 | しょうの とくぞう
1942- 竹工芸家 大分市出身
武蔵野美術大学彫刻科卒業。
父祥雲斎に師事。此君亭工房のクラフト制作に携わる。
1974年、祥雲斎の没後、作家活動に入る。
翌年以降県内外で度々個展を開催。
1979年の初入選以降、日展に毎年入選し、1998年に特選受賞。
1980年から日本新工芸展に毎年出品し、度々入選。2016年に文部科学大臣賞受賞。平成元年より日展会友。
主に竹ひごを重ねた櫛目編による造形的な作品を制作。
編集・写真
Editor & photographer
渡邊 航 | わたなべ こう
1977- 編集者 東京都出身
出版社勤務ののち、フリーランスで活動。
主な編集書籍
『 古美術柳 日々の花 』 川島南智子 著 2012年 ㈱マリア書房
『 游行 福森雅武の花 』 福森雅武 著 2021年 ㈱亥辰舎
Instagram : @nichijyoka